人手が足りない、シフトを組むだけで休日がつぶれる、口コミへの返信が追いつかない ― 飲食店を営む方なら、一度はこうした悩みを抱えたことがあるはずです。本日からの新シリーズでは、業種ごとに「AIで具体的に何ができて、時間とコストがどれだけ変わるのか」を、AIに詳しくない経営者の方へ向けてお伝えしていきます。
記念すべき第1回は「飲食店」です。結論から言えば、飲食店こそ、AIを使って「今いる人数のまま」回せる業務が一気に増える業種です。特別な知識も、大きな投資も要りません。まずは肩の力を抜いて読んでみてください。
飲食店が抱える「あるある課題」
まずは、多くの飲食店に共通する悩みを整理してみましょう。おそらく、いくつも心当たりがあるはずです。
ひとつは慢性的な人手不足です。募集をかけても応募が来ない、来てもすぐ辞めてしまう。結果として、店長や経営者自身が現場とバックオフィスを掛け持ちすることになります。次にシフト作成の手間。スタッフの希望、繁忙時間帯、スキルの組み合わせを考えながら毎週パズルを解くような作業に、何時間も取られていないでしょうか。
さらに口コミやSNSへの対応。グルメサイトやGoogleマップの口コミに丁寧に返したいけれど手が回らない、SNSの投稿も「やった方がいい」と分かっていても続かない。そして食材ロス。仕入れの読みが外れて廃棄が出る、逆に品切れで機会損失が出る ― このあたりは、利益に直結するだけに悩ましいところです。
これらの課題に共通するのは、「人を増やさないと解決しない」と思い込まれている点です。実は、その多くがAIで大きく軽くできます。
AIで、こう解決できる
ここからは具体的に、飲食店ですぐ試せるAIの使い方を5つ紹介します。いずれも、無料〜月数千円のツール(ChatGPTなど)で始められるものばかりです。
① シフト作成のたたき台を数分で
スタッフの希望休と、曜日・時間帯ごとの必要人数を伝えれば、AIがシフトの「たたき台」を数分で作ってくれます。ゼロから組むのと、8割できた表を手直しするのとでは、かかる時間がまるで違います。最終調整は人間の判断で行えばよく、AIは面倒な「叩き台づくり」を肩代わりしてくれる、と捉えると分かりやすいでしょう。
② 口コミ・予約問い合わせへの返信文
Googleマップやグルメサイトの口コミ、メールでの予約問い合わせに対して、状況を伝えれば返信文の案をすぐ作成できます。「高評価のお礼」「クレームへの丁寧なお詫び」など、トーンを指定すれば角の立たない文面に仕上がります。そのまま使うのではなく、店の言葉に少し直して送るのがコツです。
③ SNS投稿・販促文の量産
「今週のおすすめ」「季節限定メニューの告知」といったSNS投稿やチラシの文案も、AIの得意分野です。1つのネタから、Instagram用・LINE用・チラシ用と表現を変えて何パターンも作れるため、「投稿が続かない」という悩みがぐっと軽くなります。
④ メニュー名・POP・多言語メニュー
新メニューの名前のアイデア出し、卓上POPのキャッチコピー、そして外国人観光客向けの多言語メニューの下訳まで、AIは数分でこなします。インバウンド需要のある立地なら、英語・中国語・韓国語のメニューを安価に用意できるのは大きな武器です。
⑤ (一歩進んで)来店予測で食材ロスを減らす
少しレベルは上がりますが、過去の売上データや曜日・天候の傾向をもとに、「明日はどれくらい仕込めばよいか」の予測にAIを使う取り組みも広がっています。仕入れの精度が上がれば、廃棄と品切れの両方を減らせます。まずは①〜④から始め、慣れてきたらここを目指す、という順番がおすすめです。
結局、時間とコストはどれだけ減るのか
ここがいちばん気になるところでしょう。あくまで一例で、店舗の規模や運用によって変わりますが、イメージをつかむための目安を挙げてみます。
たとえば口コミ返信。1件あたり10分かけていた返信文づくりが、AIにたたき台を作らせれば2〜3分に短縮できます。月30件なら、ざっと月3〜4時間の削減イメージです。シフト作成も、毎週1〜2時間かけていたものが、たたき台を使えば30分前後に。月にすると数時間が浮きます。SNS投稿の文案づくりも、1本30分が5〜10分になれば、続けるハードルが大きく下がります。
数字そのものより大切なのは、こうして浮いた時間を、接客や新メニュー開発といった「人にしかできない仕事」に振り向けられるという点です。AIはコスト削減の道具であると同時に、「経営者の時間を取り戻す道具」でもあるのです。
※ここで挙げた数字はあくまで一般的な目安です。実際の効果はお店の状況によって変わりますので、まずは1つの業務で試し、自店での削減幅を測ってみることをおすすめします。
ただし、正しく使うにはコツがいる
便利な一方で、飲食店だからこそ気をつけたい点が2つあります。
ひとつはAIが事実と違う情報を「もっともらしく」作ってしまうことです。これは「ハルシネーション」と呼ばれる現象で、たとえばメニューのアレルギー表示や原産地、栄養情報などをAIに書かせた場合、誤った内容が混じる恐れがあります。お客様の安全に関わる情報は、必ず人間が事実確認をしてから使ってください。
もうひとつはお客様の個人情報の扱いです。予約者の氏名・電話番号・要望などを、そのままAIサービスに入力するのは避けましょう。返信文を作らせるときは、固有名詞を伏せて「常連のお客様から〜という問い合わせ」といった形に置き換えるのが安全です。
このあたりの「AIの落とし穴」と上手な付き合い方は、別途お届けしている用語解説シリーズでも詳しく扱っています。あわせて押さえておくと、より安心してAIを使えるはずです。
次回予告
次回は、「小売・物販/EC」でのAI活用を取り上げます。商品説明文の自動作成、在庫・需要の予測、接客チャットなど、店舗とネットの両方で効いてくる使い方を、同じくROI(時間・コスト)の視点でお届けする予定です。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まとめ
飲食店は、シフト作成・口コミ返信・SNS発信・メニュー作成といった「時間を食う割に人を選ばない業務」をAIに任せやすい業種です。①〜④の身近なところから始め、慣れたら来店予測などへ広げていく ― この順番なら、無理なく「今いる人数のまま」店を回せるようになります。
注意点は、メニューや個人情報など「正確さ・安全が問われる情報」は必ず人間が確認すること。この一線さえ守れば、AIは飲食店経営の心強い味方になります。関西ぱどでは、こうしたAI活用を実際に手を動かしながら学べる「AI Bootcamp」を開講予定です。「自店で何から始めればいいか相談したい」という方は、ぜひお気軽にご検討ください。


