前回の記事では、SNS投稿・チラシ・DMの販促コピーを AI で素早く作る方法をご紹介しました。
本日はその続編として、中小企業の経営者の多くが頭を悩ませている 「採用業務」を AI で楽にする方法をお届けします。今回扱うのは、応募を集める「求人票」、こちらから攻める「スカウト文」、そして応募後の「面接準備」。採用フローの主要3段階それぞれで AI が使えます。
人手不足はもはや業種を問わない経営課題です。採用にかける時間が圧縮できれば、その分を本業や人材育成に回せます。今回もそのまま使えるプロンプトを3本載せていますので、ぜひお試しください。
採用業務で AI を使うときの3つのコツ
本題に入る前に、採用業務特有の “上手な指示の出し方” を整理しておきます。採用は人の人生に関わる業務だからこそ、AI の使い方にもひと工夫が必要です。
① 求める人物像をできるだけ具体的に伝える
「真面目な人」ではなく「指示を待たずに自分から動ける人、未経験でも素直に学べる人」など、行動レベルで指定します。
② 自社の “弱み” や “等身大の魅力” も伝える
「大手より給与は低いが、家族経営で残業がほぼない」など、無理に大企業風に書かず、リアルを伝えると応募の質が変わります。
③ 出力したものを必ず自分の言葉で書き直す
求人票やスカウト文は応募者にとって “会社の第一印象” です。AI 任せの量産品ではなく、必ず自分の言葉に置き換える工程を入れます。
シーン1|求人票の作成
求人票は応募の入口です。採用がうまくいっていない会社の多くは、求人票そのものに原因があります。「事務職・経験者優遇・週休二日」だけでは、求職者には何も伝わりません。AI に骨子を作らせて、自社の魅力を引き出すフレームとして使うのが効果的です。
▼ そのまま使えるプロンプト例
あなたは中小企業の採用コピーライターです。
以下の条件で、求人媒体に掲載する求人票本文を作成してください。
■ 業種:従業員15名の地域密着型工務店
■ 募集職種:現場監督補助(未経験OK・20代〜30代希望)
■ 求める人物像:
・指示待ちではなく、自分から動ける人
・職人さんとのコミュニケーションを楽しめる人
・体力に自信がなくても、誠実さで補える人
■ 自社の魅力(等身大で):
・大手より給与は低いが、社員間の距離が近く家族的な雰囲気
・現場直行直帰OK、残業は月平均10時間以下
・3年で現場主任クラスに昇格できるスピード感
■ 構成:
・キャッチコピー(20文字以内)
・仕事内容(300文字)
・求める人物像(200文字)
・働く環境・福利厚生(200文字)
・最後に応募者への一言メッセージ(100文字)
使うときのポイント
「等身大の魅力」を必ず伝えることがポイントです。「アットホームな職場です」のような抽象的な言葉ではなく、「社員旅行は年1回、希望者のみ」のような具体的な事実を伝えると、ミスマッチが減ります。AI が出してくる文面は綺麗にまとまりすぎる傾向があるので、最後は自分の言葉で泥臭さを足すと刺さりやすくなります。
シーン2|スカウト文の作成
求人媒体のスカウト機能や、ビジネス系SNSでのダイレクトメッセージは、応募者の興味を引けるかどうかで開封率・返信率が大きく変わります。テンプレ感のあるスカウト文は瞬時に見抜かれてスルーされます。AI を使って、相手のプロフィールに合わせた一人ひとり違う文面を素早く作るのが現代の主流です。
▼ そのまま使えるプロンプト例
あなたは中小企業の採用担当者です。
以下の条件で、スカウト文を作成してください。
■ スカウト送信先:
・27歳・女性
・現職は飲食店店長(3年経験)
・転職理由:長時間労働を改善したい、土日休みの仕事を探している
・強み:接客スキル、後輩指導経験
■ 自社が募集している職種:法人営業アシスタント(完全週休二日、研修制度あり)
■ 訴求軸:
・飲食店での接客経験が、法人営業でも活きる理由を具体的に伝える
・働き方が大きく改善する点を、押し付けがましくなく伝える
■ 構成:
・件名(20文字以内、開封されやすいもの)
・冒頭の自己紹介(2行)
・なぜあなたに連絡したか(3〜4行・具体的に)
・自社で活かせる経験(3〜4行)
・カジュアル面談の打診(2行)
■ トーン:堅すぎず、上から目線にもならない、対等な距離感で
使うときのポイント
スカウト文で最も重要なのは 「なぜあなたに連絡したか」の部分です。ここがテンプレ感丸出しだと一瞬で削除されます。AI に相手のプロフィールを具体的に渡し、その人にしか当てはまらない理由を書かせるのがコツです。出てきた文面は必ず読み返し、「これは誰にでも送れる文章になっていないか?」を自問してから送信してください。
シーン3|面接準備(質問リストと評価ポイントの整理)
面接は、限られた時間で応募者の本質を見抜く必要があります。準備不足のまま面接に臨むと、当たり障りのない質問で終わり、入社後にミスマッチが発覚する― これは多くの中小企業が経験している失敗パターンです。AI に面接質問リストを作らせると、自社では出てこない角度の質問を提案してくれます。
▼ そのまま使えるプロンプト例
あなたは採用面接のプロです。
以下の条件で、面接の質問リストと、各質問の評価ポイントを作成してください。
■ 募集職種:法人営業アシスタント(中小企業・社員20名)
■ 応募者情報:
・29歳・男性
・前職は飲食店勤務(5年)、未経験で法人営業に挑戦
・志望動機:接客経験を活かしつつ、ビジネスの現場で成長したい
■ 自社で重視する適性:
・主体的に動けるか
・社内の異なる立場の人(営業・経理・現場)と円滑にやり取りできるか
・粘り強さ、地道な作業を厭わないか
■ 出力形式:
・質問8個(導入質問→深掘り質問→入社後イメージの順)
・各質問について「何を見るための質問か」「良い回答例」「気をつけたい回答例」を併記
・面接時間は40分を想定
使うときのポイント
「何を見るための質問か」を一緒に出させるのが最大のコツです。これがあると、面接中に「この人の回答は、自社が重視する適性にどれだけ当てはまるか」を判断する基準ができます。質問だけを並べたチェックリストでは、面接官の好き嫌いで結果がブレやすくなります。AI に評価軸まで作らせることで、複数名で面接する場合の判断基準を揃えやすくなります。
採用業務で AI を使うときの注意点
採用は、応募者の個人情報を扱う業務です。履歴書・職務経歴書の内容をそのままAIに貼り付けることは避けてください。氏名・生年月日・住所などの個人情報は、必ず伏せ字に置き換えるか、属性情報(年齢層・職種・経験年数など)だけを抜き出して入力します。
また、AI が出してくる面接質問の中には、応募者の家族構成や宗教、出身地など、面接で聞いてはいけない項目(就職差別につながる質問)が混ざることがあります。厚生労働省が示している指針を確認しつつ、AI 出力をそのまま使わず、必ず人間がチェックする工程を入れてください。
次回予告
次回(第5回)は、経営者が知っておくべき AI 利用の落とし穴 ― 情報漏洩と著作権をテーマにお届けします。便利な AI だからこそ、押さえておきたいリスクの話です。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
まとめ
採用業務で AI を使うコツは、「求める人物像を具体的に伝える」「等身大の魅力を伝える」「最後は必ず自分の言葉に置き換える」の3点です。求人票・スカウト文・面接準備のすべてに共通する原則です。AI は採用業務の “考える起点” を素早く作ってくれる存在として活用し、最終判断と仕上げは人間が担う ― この役割分担が採用成功の鍵になります。
関西ぱどでは、AI に初めて触れる経営者・ビジネスパーソンを対象に、短期集中型の「AI Bootcamp」を開講予定です。実際に手を動かしながら、自社業務への活かし方を学べる内容になっています。


